【採用担当の本音】異業種転職は無謀?「軸ずらし転職」で年収が200万円変わった話と、40代で挑むときのポイント

40代の転職

「業界を変える転職は、リスクが大きいからやめておいたほうがいい」

そんな言葉を、一度は聞いたことがあるかもしれません。

こんにちは、採用に関わる仕事を10年ほどしている、はれまです。

私は30代前半のとき、メーカーから商社へ、業界を変える転職をしました。

結果からお伝えすると、前の会社にそのまま残っていた場合と比べて、

年収にはおよそ200万円の差がついています。

そして今は、採用に関わる立場として、業界を変えて応募してくる方を数多く見てきました。

その中には、40代で異業種に挑戦する方もたくさんいます。

この記事では、「業界を変えた本人」と「採用する側」の両方の目線から、

異業種転職で押さえておきたいポイントをお伝えします。

なぜ業界を変えようと思ったのか

当時の私は、メーカーの工場で働いていました。

現場の仕事から始まり、品質管理を担当していました。

工場の仕事は、生産ラインを軸に回っていきます。ラインが動いている限り、

毎日やることは大きく変わりません。気がつけば、同じ仕事の繰り返しがルーチンワークになっていて、正直なところ「つまらない」と感じ始めていました。

もうひとつの理由は、給料です。当時は、残業をしなければ月20万円を超えない水準でした。

仕事の中身も、給料も変えたい。それが転職を考えたきっかけでした。

「今の仕事に飽きてきた」「この給料のまま続けていいのか」

——もし同じように感じているなら、この記事はきっと参考になると思います。

準備でやったのは、とにかく情報を集めることでした

転職を決めてから最初にやったのは、情報を集めることでした。

当時の私が使ったのは、求人誌、ハローワーク、新聞、転職サイト、それから知人からの話です。とにかく使えるものは全部使いました。

情報は鮮度が命だと思っていたからです。

いい求人ほど早く埋まります。だから、どこか一つに絞って眺めているより、入口を増やして早く気づけるようにしておくほうが確実だと考えていました。

正直に言うと、当時と今では手段がだいぶ変わりました。求人誌や新聞の求人欄は、今の主役ではありません。今なら転職サイトやスカウトサービスがその位置にあります。

ただ、中身は変わっていないと思っています。

入口を1つに絞らない。使えるものは全部使う。

これは今でもそのまま通用する考え方です。むしろ、こちらから探しにいく方法と、向こうから声がかかる方法を両方持っておけるぶん、今のほうが有利かもしれません。

勝ち筋は「職種の軸を残して、業界だけを変える」こと

業界を変える転職と聞くと、「今までの経験がゼロになるのでは」と不安になる方が多いと思います。

私もそうでした。

でも実際には、経験はゼロにはなりませんでした。

私は前職で品質管理を担当していて、転職先では生産管理のポジションで入社しました。

品質管理と生産管理。

名前だけ見ると別の仕事に思えますが、実際にやってみると共通点がとても多い仕事です。

どちらも、工場のモノづくりを支えるという意味では地続きの仕事でした。

採用する側にいる今の感覚でも、これは同じです。

業界が変わっている方には「では、うちで何をしてもらうか」がすぐ浮かびます。

でも業界も職種も同時に変わっていると、

こちらもイメージを作るところから始めなければなりません。

その差は、正直あります。

つまり、こういうことです。

業界と職種を同時に変えるのではなく、職種の軸を残して業界だけを変える。

これなら、面接で「あなたの経験はうちでも活きますね」と言ってもらえる土台が残ります。

業界を変えたい方は、まず「自分の職種の軸はどこにあるか」を考えてみてください。

軸とは、職種名のことではありません

こうした転職の仕方は、「軸ずらし転職」と呼ばれることがあります。業界か職種、どちらか片方だけを動かして、もう片方は動かさないという考え方です。

ただ、ここで一つだけ補足させてください。

私の場合、正確に言えば職種名も変わっています。品質管理から生産管理へ。名前だけを見れば、これは職種も動いています。

それでも経験がゼロにならなかったのは、名前ではなく中身が残ったからです。

工場で何が起きているのかを知っている。ラインがどう動き、どこで止まり、誰が困るのかが分かる。この部分は、名前が変わっても持ち運べました。

つまり、軸というのは職種名のことではありません。

名刺に書いてある肩書きではなく、その仕事を通して身についた中身のほうが軸になります。

ここを勘違いすると、転職の選択肢を自分で狭めてしまいます。「私は品質管理しかやってきていないので、品質管理の求人しか受けられません」と考えてしまうからです。

実際にはそんなことはありません。

採用する側として書類を見ていても、職種名そのものより「この方は何ができるようになった人なのか」を読み取ろうとしています。職種名は、それを知るための手がかりのひとつでしかありません。

正直に言うと、業界は最後まで意識していませんでした

ここまで「職種の軸を残して業界を変える」と書いてきました。後から振り返れば、たしかにそれが勝ち筋でした。

ただ、正直に打ち明けます。

当時の私は、最初から業界を決めて動いていたわけではありません。

職種の軸を残すことは意識していました。30代前半で、まったくの未経験から挑むのは厳しいと思っていたからです。そこだけは外さないようにしていました。

でも「どの業界に行こう」とは考えていませんでした。業界という言葉を意識したのは、いちばん最後です。内定を2社からいただいて、どちらにするかで悩んだとき。そのときが初めてでした。

なぜこれを書くかというと、転職の記事にはたいてい「業界を選びましょう」「戦略を立てましょう」と書いてあるからです。

もちろん、それができるならそのほうがいいと思います。

ただ、できていなくても進めます。私がそうでしたから。

戦略が先にあって動き出せる人ばかりではありません。

動きながら見えてくるものもあります。

準備が完璧でないことを理由に、動き出さないほうがもったいないというのが、

実際にやってみた私の実感です。

最後の2社を、何で選んだか

では、その最後の2社をどう選んだのか。ここが今回いちばんお伝えしたいところです。

残っていたのは、今の会社と、もう1社の大手メーカーでした。

今の会社大手メーカー
知名度・規模大きくはない大手
仕事の中身いくつかの事業があり、幅がありそうだった工場に関わる専門職。範囲は決まっている
年収の見え方先のことは分からない年齢ごとの金額が表で示された
私の判断こちらを選んだ見送った

大手メーカーのほうは、正直に言って魅力的に見えました。名前も知られていましたし、安定もしています。

決め手になったのは、仕事の幅でした。

私はもともと、同じことの繰り返しが好きではありません。今の会社はいくつかの事業を持っていて、自分にも仕事の幅が持てるようになるかもしれない、と感じました。もう1社のほうは、仕事の内容がはっきり決まっているぶん、その幅は限られていると感じたのです。

もうひとつ、印象に残っていることがあります。

大手メーカーの選考で、年齢ごとの給与額が並んだ表を見せていただきました。30歳ならいくら、31歳ならいくら、そのまま55歳まで続いていく表です。

透明性という意味では、とてもいい仕組みだと思います。将来の見通しが立ちますし、不公平感も出にくい。

ただ、そのとき私が感じたのは——つまらない、でした。

自分が何をしても、その表の金額に着地する。頑張っても、頑張らなくても。当時の私には、それがどうしても受け入れにくかったのです。

今にして思えば、このときの選択がすべてでした。

前の記事で「残った場合の未来の自分と比べてください」と書きましたが、あの表はまさに未来の自分の年収が先に見えてしまっている状態です。もしあちらを選んでいたら、私の年収は今と違っていたはずです。

目標の年収額は、決めていませんでした

年収の話をもう少しだけ。

転職の準備として「目標年収を決めましょう」と書かれているのをよく見かけます。生活費から逆算して、必要な金額を出しておく、という考え方です。

私は決めませんでした。

当時の私は、年収は価値に対する対価だと思っていました。だから最初に金額の話から入るのは違う気がしていたのです。必要とされる人間になれば、年収は勝手に上がるものだと考えていました。

これが正しいやり方かどうかは分かりません。決めておいたほうがいい場面もあると思います。

ただ、結果として私の年収は上がりました。そして上がったのは、交渉が上手だったからではなく、入社後に「この人に任せたい」と思ってもらえる場面を作れたからです。

採用する側になった今、この感覚は間違っていなかったと思っています。金額を動かすのは交渉ではなく、採りたいと思われることだからです。

希望年収の伝え方については、採用側から見た話を別の記事にまとめています。

年収は「今の自分」ではなく「残った場合の未来の自分」と比べる

気になる年収の話をします。

私の場合、入社時点での年収アップは約40万円でした。

数字だけ見れば、「業界を変えるリスクを取ったのに、それだけ?」と思われるかもしれません。

でも、比べる相手はそこではありません。

前職では、そのまま勤め続けた場合に将来就くはずだったポストと、

その給料水準がだいたい見えていました。

その「残った場合の未来の自分」と今の自分を比べると、差はおよそ200万円になります。

転職の年収を「今の年収からいくら上がるか」だけで判断すると、見誤ります。

「このまま残った場合、5年後・10年後の自分はいくらもらっているのか」

この視点で比べてみてください。今の会社の先輩や上司の給料は、

そのまま「残った場合の未来の自分」の給料です。

それが今より大きく増えないのであれば、入社時点の上げ幅が小さくても、

転職したほうが長い目では得になることがあります。

本当の年収アップは、入社後に起きた

ここからは、転職のガイド記事ではあまり語られない話です。

私は生産管理のポジションで入社しました。

ただ、入社してしばらくして、担当の仕事が薄い時期がありました。

そのとき、自分から「営業をやらせてほしい」と手を挙げたんです。

結果的に、この動きが経営層の目に留まり、今の役割と年収につながっています。

振り返ると、転職そのものより、この一歩のほうが年収への影響は大きかったと感じています。

転職の情報を集めていると、どうしても「内定がゴール」に見えてきます。

でも、実際には内定はスタートです。

特に業界を変えた転職では、最初は分からないことだらけで「様子見」になりがちです。

だからこそ、少し余裕が出てきたときに自分から動けるかどうかで、その後が大きく変わります。

採用側から見た、合否の分かれ目は「仮説」を持っているか

最後に、採用する側の目線をお伝えします。

異業種から応募してくる方の面接で、私が見ているポイントを一言でいうと、

「仮説を持っているか」です。

面接で印象に残っている方がいます。飲食業で店長を経験してきた40代の方で、

応募先は未経験の営業職でした。

その方は、面接でこう話してくれました。

「いろいろなお客様の対応を経験してきたので、人付き合いには慣れていると思います。

アルバイトのマネジメントやクレーム対応で培ってきた対人コミュニケーションの力を、

営業という形で活かしてみたいんです」

飲食店の店長と営業。業界も職種も違います。

でもこの方は、自分の経験を棚卸しして、「その経験が新しい仕事でどう活きるか」

を自分の言葉で語れていました。

これが「仮説を持っている」ということです。

40代・未経験であっても、これまでのキャリアで活かせるものは必ずあります。

大事なのは、それを自分で棚卸しして、新しい役割にどう転用できるかの

仮説を持って面接に来ることです。

逆に、「入ってから考えます」という行き当たりばったりの姿勢の方は、

正直に言うと採用側としては不安になります。

入社後も、その癖はなかなか抜けないのではないかと見ているからです。

完璧な答えである必要はありません。

仮説は、入社してから修正すればいい。

でも、仮説を持って来る人と持たずに来る人の差は、面接の場ではっきり出ます。

まとめ:業界を変える転職で押さえたい4つのこと

最後に、この記事のポイントをまとめます。

  • 職種の軸を残して、業界だけを変える。経験はゼロにならない
  • 年収は「今の自分」ではなく、「残った場合の未来の自分」と比べる
  • 内定はゴールではない。入社後に自分から動けるかで年収は変わる
  • 面接では「経験をどう転用するか」の仮説を自分の言葉で語る
  • 軸とは職種名ではなく、その仕事で身についた中身のこと。名前が変わっても持ち運べる

業界を変える転職は、無謀ではありません。

ただし、勢いだけで飛び込むものでもありません。

職種の軸と仮説。

この2つを持って挑めば、40代からでも道は開けると、採用の現場にいる立場として感じています。

そして最後にもう一度だけ。私自身は、完璧な戦略を立ててから動いたわけではありませんでした。業界を意識したのは、いちばん最後です。

準備が整っていないことを理由に、動き出さないでいるほうがもったいない。

まだ転職すると決めていない段階でも、動くこと自体には意味があります。そのあたりは別の記事に書きました。

40代の転職市場について、採用側から見た実情はこちらの記事にまとめています。

【採用担当の本音】40代の転職は「厳しい」だけじゃない|企業が今、40代を欲しがる理由
「40代の転職は厳しい」とよく言われます。でも採用に10年関わってきた立場から見ると、それだけが真実ではありません。多くの企業で30〜40代が不足していて、むしろ40代を採りたいと考える会社もある——その本音をお話しします。

「そもそも40代の転職って実際どうなの?」という方は、こちらからどうぞ。

【採用担当の本音】40代の転職の”現実”|実力より大事な「たった1つのこと」
40代の転職は本当に厳しい?採用に10年関わってきた立場から、現場で見てきた「通る人・見送る人」の差を正直にお話しします。実は実績そのものより大事な「伝え方」と、40代がやりがちなもったいない落とし穴とは。

コメント