「希望年収は、いくらとお伝えすればいいのだろう」
転職活動のなかで、いちばん言いにくい話かもしれません。
高く言えば落とされそうだし、低く言えば損をしそうだし。
こんにちは、採用に関わる仕事を10年ほどしている、はれまです。
調べてみると、「相場を調べましょう」「高すぎると選考に落ちます」「幅を持たせて伝えましょう」といったコツが、たくさん出てきます。
今日は、それを聞いている側から、正直なところをお話しします。
先にお伝えすると、答え方を磨くことに、あまり意味はありません。
その理由を、順番に書いていきます。
そもそも、面接の前にもう伝わっています
まず、前提の話から。
あなたの希望年収は、面接が始まる前に、こちらの手元にあることが多いです。
スカウト型のサービス経由でご応募いただいた場合、事前にアンケートをお願いしています。そこに、前職の年収、希望年収、最低希望年収を書く欄があります。
エージェント経由の場合は、前職の年収がおおよその形で共有されてきます。
つまり、私はその情報を持った状態で、面接の席に着いています。
面接でうまく言おうと準備しても、その前にもう見ている。それが実際のところです。
「応相談」と書かれていても、何とも思いません
履歴書や職務経歴書の希望年収欄に「応相談」と書く方は多いと思います。
これも、正直に書きます。何とも思いません。
「しっかり相談して決めていきましょう」と思うだけです。
ただ、ひとつだけ、頭をよぎることはあります。
本当は高く書きたいけれど、書けなかったのかな。遠慮されているのかな。
そう感じることは、あります。
「応相談が無難」とよく言われますが、少なくとも私は、書いてあってもなくても評価は変わりません。
そもそも「相場」なんて、ないと思っています
ここが、今日いちばんお伝えしたいところかもしれません。
答え方の記事には、必ず「相場を調べましょう」と書いてあります。
でも、採用する側にいて思うのは、実際には相場なんてものはない、ということです。
年齢、経験、スキル、知識、前職の年収。ひとりひとり、まったく違うキャリアを歩んできています。
同じ職種、同じ年齢でも、できることも、これまでやってきたことも違う。
それを平均した数字に、どれだけの意味があるでしょうか。
「相場」という言葉が使えるとしたら、社内相場というニュアンスなら、まだ分かります。
自社のなかで、同じような役割の人がどれくらいの水準にいるか。それは確かに存在します。
でも、それは世間の相場ではなく、その会社のなかの話です。そして、外からは見えません。
だから、世間の相場を必死に調べて、そこに自分を合わせにいく必要はないと思っています。
高すぎる希望額で、落とすことはありません
ここも、はっきり書いておきます。
よく「相場からかけ離れた高い希望年収を伝えると、選考に落ちる」と言われます。
私の実感は、違います。
高い希望額をうかがったときに社内で起きるのは、「落とそう」という話ではありません。
この希望額に、どうやって近づけるか。その議論のほうが、ずっと多いです。
たとえば、こんなふうに考えます。
・試用期間中は、その額には届かない。でも、正規の雇用になったら届くのではないか
・入社の時点では難しいが、3年後には超えている想定が立てられるのではないか
そうやって、シミュレーションをします。
もちろん、どうやっても届かない、という結論になることはあります。
でも、そのときも「高い希望を言ったから見送り」ではありません。条件が合わなかった、という話です。
だから、高く言うことを、怖がらなくていいと思います。
逆に、安すぎるときは
反対のケースも書いておきます。
明らかに低い希望額を伝えられたとき、こう思います。
前職では、そのくらいしかもらっていなかったのかな、と。
責める気持ちはまったくありません。基準があるようでないものなので、正直に答えてくださっているんだな、という印象を持つことのほうが多いです。
ただ、こちらから見ると、その額がそのまま出発点になってしまう可能性はあります。
低く言うことに、守りの効果はあまりない。そう思っておいたほうがいいかもしれません。
「御社の規定に従います」と言われたら
これも、よくある答え方だと思います。
正直な反応を書くと、こうです。
「ありがとうございます。しっかり考えますね」
悪い印象は、まったくありません。
ただし、ひとつだけ正直に付け加えておきます。
これは、こちらが採用したいと思っている方が前提の話です。
採りたいと思っている方が「規定に従います」と言ってくださったら、なんとか良い条件を出せないかと考えます。
でも、そもそも評価が固まっていない段階では、その一言で何かが動くわけではありません。
つまり、言葉の選び方より先に、評価があるということです。
額を動かすのは、交渉ではありません
ここまで書いてきて、見えてきたと思います。
年収の額を動かすのは、伝え方でも、交渉術でもありません。
この人を採りたい、と思われることです。
実際、「ぜひこの方に来てほしい」となれば、社内相場よりも多く出すことはあります。役員の判断で、通常の水準を超える額を提示することは、普通にあります。
逆に言えば、そこまで思われていなければ、どんなに上手に希望を伝えても、額は動きません。
だから、年収を上げたいと思ったら、年収の話し方を磨くよりも、面接そのものの中身を磨いたほうが、はるかに効きます。
面接で何を聞かれて、どう答えるか。その土台はこちらにまとめました。
【採用担当が解説】転職面接で聞かれること一覧|”答え方”で差がつく
ただし、超えられない線はあります
期待だけを持たせるのは不誠実なので、限界も書いておきます。
会社によって考え方はいろいろあると思いますが、私のところの話をします。
役員や本部長といった役職の方の年収を超える額を、新しく入る方に提示することは、ありません。
これは、多くの会社で同じだと思います。
一方で、部門長のレベルに近い額を提示することは、あり得ます。
そして、会社には賃金の仕組みがあり、基本的にはその枠のなかに収めることが求められます。透明性を保ち、社内で不公平が生まれないようにするためです。
とはいえ、どうしても採りたい方に対して、例外的な判断が働くことが、まったくないわけではありません。最終的には、経営の判断になります。
つまり、枠はある。でも、その枠のなかで動く余地は、思っているより広いということです。
それでも、希望額は伝えたほうがいい
ここまで読んで、「では希望を言っても意味がないのでは」と思われたかもしれません。
そうではありません。伝える意味は、あります。
実際のところ、提示する額を考えるときは、前職の年収を基準にすることが多いです。当然といえば、当然かもしれません。
そのうえで、枠のなかのどこに置くかを決めていきます。
そのとき、あたりをつけたい、というのがこちらの本音です。
枠はあるけれど、その枠は思ったより広い。だからこそ、ご本人がどのあたりを望んでいるのかを知りたいんです。
何もおっしゃっていただけないと、こちらは前職の年収から動きようがありません。
だから、遠慮せずに伝えてほしいと思っています。
年収の話が本格化するのは、実は内定後です
最後に、タイミングの話をします。
答え方の記事は、どれも「面接で聞かれたら」を前提に書かれています。
でも、私の感覚では少し違います。
一次面接で年収の話が出ることは、あまりありません。二次面接でも、そう多くはありません。
内定が出たあとに、あらためて相談になる。それが通常の流れだと感じています。
つまり、面接の場で年収の話を切り出す準備に、そこまで時間をかける必要はない、ということです。
それよりも、内定が出たあとに、どう確認していくか。そちらのほうが、実際には大事になります。
そのときの伝え方は、こちらに書きました。年収の話ばかりになってしまったときに採用側がどう感じるかも、そちらで触れています。
内定が出たあとに条件を確認するのは、悪いことじゃない。でも採用側はこう見ている
まとめ
・希望年収は、面接の前にもう伝わっていることが多い
・「応相談」でも評価は変わらない。ただ、遠慮に見えることはある
・世間の「相場」は、実際には存在しないと思っている
・高すぎる希望額で落とすことはない。どう近づけるかを考える
・安すぎる額は、そのまま出発点になってしまう可能性がある
・「規定に従います」は悪くない。ただし、採りたい方が前提
・額を動かすのは交渉ではなく、採りたいと思われること
・役職者の年収は超えられない。でも、枠のなかの余地は思ったより広い
・提示額は前職の年収が基準になりやすい。だから希望は伝えたほうがいい
・年収の話が本格化するのは、実は内定後
年収の話は、いちばん言いにくいところだと思います。
でも、聞いている側は、あなたが思っているほど身構えていません。
高く言ったから落とす、ということもありません。
それよりも、この人と一緒に働きたい、と思ってもらえるかどうか。
結局、そこがいちばん額を動かします。


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