「引き止められて、なかなか辞められない」
「入社日を遅らせてほしいなんて言ったら、内定を取り消されないだろうか」
転職が決まったあとに、こういう不安を抱える方は多いと思います。
こんにちは、採用に関わる仕事を10年ほどしている、はれまです。
調べてみると、「入社日が遅れるのは、最も多い内定取り消しのパターン」といった記述も出てきます。読んで、余計に怖くなった方もいるかもしれません。
今日は、内定を出して受け入れる側が、そのあいだ何を考えているのかをお話しします。
結論:ちゃんと辞めてくる方が、ほとんどです
先に、正直なところを書きます。
私はこれまで、内定を出した方から「退職交渉が長引いているので、入社日を遅らせてほしい」と言われた経験が、ありません。
一度もです。
「現職が退職を認めてくれなくて」と相談されたことも、ゼロです。
もちろん、私が見てきた範囲の話です。世の中には、そういう場面もあるのだと思います。
ただ——ネットで書かれているほど、その場面は起きていない。これが私の実感です。
多くの方は、きちんと話をつけて、予定どおりに入社してこられます。
まずはそこを、知っておいてください。
引き継ぎに時間をかけたい、はむしろ好印象です
経験があるのは、こういうご相談です。
「引き継ぎに2か月ほどいただきたい」
これは、けっこうあります。
そして、理由をうかがうとだいたい同じです。
「前の会社にもお世話になったので、引き継ぎはしっかりやってから行きたい」
この姿勢は、こちらとしても好印象です。
理由はシンプルで、同じことを、うちを辞めるときにもしてくれる方だと分かるからです。
来るときだけ調子がいい人より、去り方まで丁寧な人のほうが、信頼できます。
だから「引き継ぎに時間をください」は、遠慮せずに言っていただいて大丈夫です。
ただし、受け入れる側も準備を進めています
一方で、こちらの事情も書いておきます。
入社日が決まると、受け入れる側はいろいろな準備を始めます。
・パソコンやスマートフォンの手配
・座席の用意
・こちらの引き継ぎのスケジュール
・入社後の教育計画
これらは、その日を前提に組んでいます。
だから、正直に言えば——予定どおりに来ていただきたいというのが、こちらの本音です。
これは冷たい話ではなくて、あなたを迎える準備が実際に動いている、ということです。
「待ってもらえるかどうか」だけを心配されている方が多いのですが、向こう側でも人が動いている。そう思っておいていただけると、話がしやすくなると思います。
入社日には、会社側の都合もあります
もうひとつ、あまり知られていないことを書きます。
入社日は、ご本人の希望を尊重します。ただ、会社側にも希望があります。
給与の締め日に合わせたい、という都合です。
給与計算には締め日があって、その区切りに合わせて入社していただけると、事務がすっきりします。だから、月の初めや、締め日の翌日を提案されることが多いはずです。
もちろん、絶対ではありません。月の途中の入社も普通にあります。私自身が転職したときも、月の途中でした。
ただ、なぜその日を提案されたのかが分かっていると、無理に合わせなくていい場面と、合わせたほうがいい場面が見分けやすくなると思います。
「1日でも早く入社したい」は、状況で受け取り方が違います
転職の記事を読むと、「一日でも早く入社して活躍したい、と熱意を伝えましょう」と書かれています。
これは、あなたの状況によって受け取り方が変わります。
| あなたの状況 | 私の受け取り方 |
|---|---|
| すでに退職している(離職中) | そうですよね、と思う |
| 現職に在籍している | きれいに辞めてきてくださいね、と思う |
離職中の方が「早く働きたい」とおっしゃるのは、当然のことです。
でも、現職に在籍したまま「1日でも早く」と言われると、こちらはこう思います。
前の会社のことは、大丈夫なのかな。
熱意はうれしいのですが、そこを雑にする人だと思われては、もったいないです。
在籍中の方は、「きちんと引き継いでから伺います」のほうが、印象は良いと思います。
待てるかどうかは、ポジションの性質で変わります
では、実際に入社日が遅れた場合、どこまで待てるのか。
私自身にその経験がないので、断言はできません。そのうえで、感覚としてお伝えします。
予定日から1か月ほどであれば、まだ許容できる範囲だと思います。それ以上になると、難しくなる可能性はあります。
ただし、これはポジションの性質によってまったく変わります。
| そのポジションの性質 | 入社日の融通 |
|---|---|
| 欠員の補充で、早急に人が必要 | 融通は利きにくい |
| 中長期の計画で、機能を広げるための採用 | 比較的、待てることが多い |
欠員補充の場合、その席が空いたままだと業務が回りません。だから急ぎます。
一方で、「この1年のうちに来てもらえれば」という中長期の採用もあります。組織の機能を広げるための採用は、こちらに当たります。
つまり——同じ「入社日が1か月遅れる」でも、企業によって重さがまったく違うということです。
ご自身が応募したポジションがどちらなのかは、面接でのやり取りからある程度は見えるはずです。
「現職が認めてくれない」と言う方は、実はいません
さきほども触れましたが、ここは掘り下げておきます。
転職の記事には、こう書かれていることがあります。
「現職が退職を認めてくれない」という言い方をすると、心象が悪くなる
私の経験では、そもそもそう言ってきた方が一人もいません。
そのうえで、もし言われたとしたら、正直こう思うと思います。
そもそも、転職する前提ではなかったのだろうか。
転職活動をして、選考を受けて、内定を受け取る。ここまで来ているということは、辞める決意はできているはずです。
それなのに「認めてもらえない」となると、その決意はどこにあったのだろう、と感じてしまう。
法律上、退職は本人の意思でできます。会社が「認める」ものではありません。
だから、この言い方はしないほうがいい。それは、上位の記事が書いているとおりだと思います。
「引き止められています」と聞いたら、どう思うか
似た話ですが、こちらは受け取り方が少し違います。
「今、強く引き止められていて」と言われたとき、私が思うのはこれです。
それって、迷っている証拠じゃないですか?
引き止められること自体は、悪いことではありません。むしろ、それだけ必要とされていたということです。
ただ、引き止めに揺れているのだとしたら、話は別です。
こちらはこう感じます。
決断できない理由を、前の会社に置いていないだろうか。
本当に決めているなら、引き止めがあっても「ありがたいですが、決めましたので」で終わるはずです。それが終わらないということは、まだご自身のなかで固まっていないのかもしれない。
世間では「引き止められる=優秀な証拠」と言われがちです。でも、受け入れる側から見ると、必ずしもそう映るわけではありません。
もし引き止めに遭っているなら、内定先に相談するより先に、ご自身の中で決着をつけてから話すほうがいいと思います。
前職の辞め方は、正直に言うと気にします
ここは、正直に書いておきます。
前の会社をどう辞めてきたかは、気にします。
理由は、採用の土台にあるのが「信頼」と「誠実さ」だからです。
スキルや経験は、あとから伸ばせます。でも、人との向き合い方は、そう簡単には変わりません。
去り際に、その人の姿勢が出る。だから、見てしまいます。
とはいえ、根掘り葉掘り調べるわけではありません。前の会社に問い合わせることもありません。
分かるのは、ご本人が話してくださった範囲だけです。
だからこそ——きれいに辞めることは、次の会社への一番の手土産になります。
でも、見ているのは今とこれからです
最後に、いちばんお伝えしたいことを書きます。
ここまで「気にします」と書きましたが、過去だけで判断しているわけではありません。
みなさん、いろいろな事情を抱えて転職活動をされています。
そして——会社を辞めるということは、何かしらマイナスの要素があるのが当然です。
給与が少ない。人間関係がつらい。やりたいことができない。
不満がひとつもなければ、そもそも転職を考えません。それは自然なことです。
だから、過去に何かあったとしても、私は基本的に今とこれからで判断したいと思っています。
大事なのは、そこから何を持って来てくれるかです。
(内定が出たあとのやり取りについては、こちらにも書きました)
内定が出たあとに条件を確認するのは、悪いことじゃない。でも採用側はこう見ている
まとめ
・「入社日を遅らせてほしい」と言われた経験は、私にはない。煽られているほどの場面は起きていない
・「引き継ぎに2か月ほしい」はよくある相談で、むしろ好印象
・受け入れる側は、パソコン・座席・教育計画などを入社日前提で準備している
・入社日には給与の締め日という会社側の都合もある
・「1日でも早く」は、離職中なら自然。在籍中なら「きれいに辞めてきて」と思う
・待てるかどうかは、欠員補充か、中長期の採用かで大きく変わる
・「現職が認めてくれない」は言わないほうがいい。退職は本人の意思でできる
・「引き止められている」は、迷っている証拠に見えることがある
・前職の辞め方は気にする。信頼と誠実が土台だから
・それでも、見ているのは今とこれから
転職が決まったあとの期間は、宙ぶらりんで落ち着かないものです。
でも、内定を出した会社は、あなたが来る日を前提に準備を進めています。
待たされているのではなく、待っています。
だから、遠慮せずに相談してください。きちんと事情を話していただければ、たいていのことは調整できます。
なお、退職交渉に不安がある方は、エージェントに間に入ってもらう手もあります。そのあたりは、こちらに書きました。


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